2005.3.7
パース・レポート

  
クオッカ(西豪州のロットネスト島に生息する小型有袋類)             カーティン工科大学(のほんの一部)


 西オーストラリア州パースでの在外研究も3週目に入りました。パース生活にも少し慣れてきたので、パースの街に関するレポートをしたいと思います。何回続くかは分かりませんが(おそらく2回程度?)、第一回目のテーマは、"パース中心市街地の小売業"です。


第1回:パースの中心市街地の小売業 − 百貨店からお土産店まで −

 西オーストラリア州(オーストラリア最大の州)の州都、パース市(人口134万人)の商圏人口は約180万。市内には900を超える専門店が集積しています。
 
 パースの中心商業地の代表的なショッピング・ゾーンは"ヘイ・ストリート・モール(Hay Street Mall)"と"マリー・ストリート・モール(Murray Street Mall)"です。この2つのモールは、いつも多くの買い物客でにぎわっていて、コンパクトにまとまった買物天国といった感じです。

 中心商業地の立地は、電車(トランス・パース・トレイン)のパース駅から徒歩2、3分程度。屋根つきの歩行者用高架橋やアーケードを経由して、パース駅から各モールにアクセスができるようになっています。したがって、駅からモールへの移動やモール間の移動にあたっては、信号などに煩わされることもなく、とてもスムーズに回遊が可能です。


   
 マリー・ストリート・モール:写真中央の歩行者用高架橋で駅に直接アクセスできる    駅とモールを直接つなぐ歩行者用高架橋


二つの歩行者専用モール

 ヘイ・ストリート・モールとマリー・ストリート・モールは、東西方向に平行して走っています。この2つのモールを3つのショッピング・アーケード(Piccadilly Arcade, Carillon City, Plaza Arcade)が南北に結んでいます。このためモール間の行き来は容易にできます。

 両モールとも歩行者専用モールで、車は入ることができません。歩行者専用エリアには、空き店舗は一切なく、とても元気な商業集積地域です。とはいえ、ここ数年の通行量は横ばい傾向が続いているそうです。


             
             パース中心部: 地図の上がパース駅(緑の四角)。オレンジの部分が歩行者専用エリア



     
 歩行者専用のヘイ・ストリート・モール                                 ヘイストリートの隣の通りは高層ビルがならぶセントジョージ・テラス

 
 プラザアーケード:ヘイ・ストリート・モールとマリー・ストリート・モールを結ぶアーケードのひとつ


中心市街地を案内してくれるボランティア:The i-City Volunteer Hosts

 マリー・ストリート・モールには、パース市のインフォメーション・キオスクがあります。ここのスタッフは全員、The i-City Volunteer Hostsと呼ばれるボランティアの人たちです。 i-City Volunteer Hostsは、中心市街地での買物やイベント、アトラクションをはじめ、パース市に関する各種の質問に答えてくれます。また、 i-City Volunteer Hostsが無料で中心地を案内してくれるウオーキング・ツアーも毎日開催されています。成人人口の7人に1人はボランティア組織に加入しているといわれるオーストラリア。中心市街地でもボランティアが活躍しています。


  
  i-City Volunteer Hosts: 70〜80人が活躍。若い人もいるそうです。


デパート3つのデパートが立地

 このエリアには、パースの主要な百貨店である、デビット・ジョーンズ(David Jones)、マイヤー(Myer)、ターゲット(Target)が立地しています。3つの店とも、中心商業集積にうまく溶け込んでいます。
 いずれの百貨店も、低金利や旺盛な消費者需要から、業績は好調です。たとえば、デビット・ジョーンズの2004年度の売上げは2000年度比で約16%も増加しています。

 店格か高い店から大衆的な店の順にならべると、デビット・ジョーンズ、マイヤー、ターゲットの順になります。デビット・ジョーンズは1838年創業のオーストラリアで最も歴史のある老舗デパートです。マイヤーは国内に61店舗を有するオーストラリア最大のデパートです。ターゲットはデパートというよりも、バラエティ・ストアといった方がよいかもしれません。

 集客力の点からみると、デビット・ジョーンズよりもマイヤー、ターゲットの方が優っているようです。マイヤーとターゲットは同一資本で、ColesMyer社が経営しています。ちなみに、ColesMyer社は大規模スーパーマーケットのColesも経営するオーストラリア最大の小売企業です。
 


   
  大衆的な価格帯で私向きのターゲット                  老舗デパートのデビット・ジョーンズ

 
 オーストラリア最大のデパート、マイヤー
 

ロンドン・コート中心商業地のシンボル

 ヘイ・ストリート・モールとセントジョージ・テラス(St George Terrace;パースの代表的なビジネス街)の間には、ロンドン・コート(London Court)があります。ロンドン・コートは、1937年にオープンした、イギリス中世の趣を感じさせるショッピング・アーケードです(アーケードといっても、日本と違い屋根はありません)。ここには、小規模なブティック、雑貨店、カフェ、アンティックショップ、土産品店などが軒をならべています。

 このチューダー様式のアーケードは、地元の人にも観光客にも人気の場所で、中心商業地のシンボル的存在となっています。ファサード(facades;建物正面)には、ウェストミンスター宮殿の時計のレプリカや彫刻をほどこされた木造枠があり、観光客に人気の写真撮影スポットとなっています。地域商業と観光とがうまく融合した事例だと思います。

     
 ブティック、カフェ、アンティックショップなどが集積するロンドンコート        ロンドンコートのファサード(時計の時間が15分遅れている。オーストラリア的!)

 
 ヘイ・ストリートからロンドンコートをぬけると、ビジネス街に一変:セントジョージ・テラス


土産品店総合店の景況は今一つ、専門性の高い店は好調

 お土産屋さんは中心市街地のいたるところにありますが、とくに、ヘイ・ストリート・モールやヘイ・ストリートと交差するバラック・ストリート(Barrack Street)に多く集積しています。

 ”何でもありの土産物品店”(絵葉書、Tシャツ、コアラやカンガルーのぬいぐるみ、アクセサリーから、ブーメランまで広く浅く品揃えをする総合型土産品店)が大部分ですが、土産にぴったりなアボリジニの工芸品専門店やオパール専門店、木製クラフトの専門店、メイドイン・オーストラリアの衣料専門店など、専門性の高い店、個性的な店もいくつかあります。

 以前は好調を続けていたパースの総合型土産品店の売り上げですが、9.11のテロで激減。その後、客数については回復しつつありますが、客単価が大きく減少したままだそうです。パース中心部では、”何でもあり型の土産物品店”の競合が激しく、景気はそれほど芳しくないようです。来店客全員に2割引のクーポン券を渡す店もあるなど、価格競争も熾烈です。

 一方、専門性の高い店や特徴のある店については、価格競争に陥ることもなく、手堅く集客しているようです。オーストラリア製の衣料品専門店Purely Australian CLOTHING COの店員さんは、「景気はよく、とても忙しい。当店は他の土産店とは違うので競争もほとんどない」と言っていました。アボリジニの工芸品専門店のCreative Nativeの店員さんも同様のことを話していました。

 オーストラリアの木製クラフトの専門店Australian Woodcraft Galleriesの店主Chris Busbyさんは、「一般的なお土産店の商品の大部分は中国製。当店の商品はオーストラリア製のみ。高品質(High quality)と専門的なサービス(Professional service)を売りにしている。業況は好調。売上げは順調に伸びている」と言っていました、土産品店も専門化が必要な時代なのかもしれません。


パースの土産:特徴のあるギフト・ショップ

   
 Creative Native(アボリジニの工芸品専門店):この店は品揃えも雰囲気もすばらしい  Creative Nativeの商品の一部 (King Streetに立地)


   
 Australian Woodcraft Galleries(写真左): クリスさん夫婦が経営するファミリービジネス。お土産にぴったりな木製クラフトを扱っている。
  (Murrsy StreetのCarillon Cityに立地)
 
 Purely Australian CLOTHING CO(写真右)オーストラリア製の衣料品専門店。 (London Courtに立地)


   
 Proost!(写真左) マーガレットリバーなど西豪州・南西地区の加工食品専門店。ジャム、オリーブオイル、ピクルス、パスタソースなどを品揃え。お土産としても最適。
         
(London Courtに立地)
  Aspect(写真右):ハイセンスでモダンなオーストラリア・クラフトを品揃えする。 (この店は中心市街地ではなく、Kings parkにあります)。パースならではのお土産を入手可能。 
  


ブランド品店

 パースには名の知れたブランド・ショップは数少ないのですが、ブランド・ショップがいくつか集積しているのが、キング・ストリート(King Street)です。ここには、ルイ・ヴィトン、クーカイの他、洗練された内外のデザイナー・ファッション店などが立地しています。

 キング・ストリートは、ヘイ・ストリート・モールから徒歩で2分程度離れた通りで、ここは歩行者専用モールではありません。通りにはパーキング・スペースがあります。
 キング・ストリートは、ヘイ・ストリート・モールとマリー・ストリート・モールと比べると、元気は今一つのようです。ルイ・ヴィトンの2階は空き店舗になっていますし、クーカイの隣も空き店舗でした。


  
 キング・ストリートのルイ・ヴィトン(2階は空き店舗でFor leaseの張り紙)      クーカイ(隣は空き店舗)


ストリート・ミュージシャン

 ヘイ・ストリート・モールやマリー・ストリート・モールのにぎわいに貢献しているのが、ストリート・ミュージシャン達です。中心市街地の歩行者空間では、日常的にストリート・ミュージシャンの演奏が楽しめます。どのミュージシャンの演奏も本格的です。


   
 何という楽器でしょうか? 人垣ができていました。                          こちらはピアノの演奏。 人は通り過ぎていました。


小売店の営業時間

 オーストラリアは小売業の営業時間の規制があります。小売店の営業時間は、月曜日から木曜日までは午前9時〜午後5時。金曜日はレイト・ナイト・ショッピングデーで、午前9時〜午後9時までの営業です(郊外店のレイト・ナイト・ショッピングデーは木曜日)。土曜日は午前9時〜午後5時、日曜日は正午から6時までです。
 祝日は、ごく一部の店(土産店など)を除いて、ほとんどの店が休みになります。


 
祝日(Labour Day 3 Mar)のヘイ・ストリート・モール店のシャッターは閉まり、人通りも少ない。


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