強いブランドを生み出す「4つの条件」

岩崎邦彦 

静岡県立大学 経営情報学部 教授


突然ですが、ここに味と価格がまったく同じ「2つの牛肉」があるとします。ひとつのパッケージには「静岡和牛」と書いてあります。もう一つには「松阪牛」と書いてあります。

さて、あなたはどちらの牛肉を選びますか?

畜産のプロが選ぶ品評会では、静岡和牛は、高い評価を受けているにもかかわらず、全国の消費者に聞いてみると、圧倒的に多くの人々が「松坂牛」を選択します。これがブランドの力です。

品質や価格がまったく同じだとしても、選ばれる商品と、選ばれない商品があります。選ばれるのは「強いブランド」です。

では、どうすれば強いブランドをつくることができるのでしょうか? 

筆者の研究室では、強いブランドにはどのような特徴があるのか、調査を実施しました。

調査対象としたのは、全国の20才代から60才代の男女1000人の消費者です。回答者が買ったことがある「商品の名前(ブランド名)」を1つ思い浮かべてもらい、その商品の特徴やブランド力などを評価してもらいました。

消費者調査データを統計的に分析した結果、強いブランドを規定する要因として、以下の4つの条件が浮かび上がってきました(図参照)。

@ コンセプトが明確であり、イメージが明快である

   「コンセプトは明確である」、「イメージは明快である」

A 感性に訴求している

   「デザインが優れている」、「感性に訴える商品である」

B 独自のポジションがある

   「競合商品が少ない」、「その商品を他の商品で代替することは難しい」

C 低価格ではない

   「価格が安い」(負の相関)、「価格の安さが魅力である」(負の相関)
 

  ブランド力の規定要因(消費者1000人調査)

注)分析手法は共分散構造分析。数字は標準化推定値(すべて1%水準で有意)。モデル適合度はGFI = .985, CFI = .991, RMSEA = .044なお、図では誤差項および独立変数間の共分散の表示は省略した。


 この4条件に、ブランドづくりのヒントがあるはずです。

あなたがブランドづくりを考えている商品を思い浮かべてみましょう。その商品は、コンセプトが明確で、消費者の心に明快なイメージが浮ぶでしょうか。消費者の理性(アタマ)だけではなく、感性(ココロ)に訴求しているでしょうか。

独自性があり、その独自性が消費者にしっかり伝わっているでしょうか。価格の安さではなく、価格以外の魅力で消費者を引きつけているでしょうか。

強いブランドは、成り行き任せではできません。戦略性と創造性を持ってつくりあげるものです。ブランドは、マーケティングにおける最強の武器です。積極的なブランド構築への取組みを期待しています。

出所)岩崎「小さな会社を強くするブランドづくりの教科書」日本経済新聞出版社


  
   

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